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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
私は、渉さんや朱羽さんの気持ちを考えたことはありませんでした。
理解、したいとも思っていませんでした。
確かにひなさんが仰られた通り、女忍月を築いていることすら気づかず、私もまた、横暴で独裁的であったことを認めましょう。
私を許して欲しいとは言いません。
言い訳を許されるのなら、私もまた、生きるのに必死でした。
親の復讐を忘れるくらいに、必死でした。
渉さんと朱羽さんが、私やご当主のような保守的な踏襲ではなく、忍月を改革してくれるのなら。もう二度と不条理な苦しみを味わう者がいなくなるのなら。
……私はもう必要ありません。
重すぎた肩の荷を下ろします。
古き者は去る……それが世の理。
私は長く忍月に居すぎました。
無様な姿をさらし過ぎました。
あなた達を信じる意味で、ひととしての誠意を、最後にあなた達に見せたいと思います。
渉さん、朱羽さん。
最初から、あなた達を信じるべきでした。
母親を切り離してあなた達とよく話すべきでした。
あなた達を見くびっていた私もまた、忍月の者でした。
至らなかった点を、噛みしめております。
さきさん、ひなさん、あれだけ嫌がっていた渉さんと朱羽さんの背中を押してくれてありがとう。
そして、私を理解しようとして下さってありがとう。
真摯に私の話を聞こうとしてくれたから、私を理解しようとしてくれたから、私はあなた達を信じようと思いました。
ひととしての温もりを持つあなた達を。
私とは違う新たな風を吹き込む「妻」が追い風となり隣にいるのなら、渉さんも朱羽さんも、道を外すことなく、忍月を変えていけると、そう信じています。
あなた達が作る忍月を、遠くから見守っております。
ご当主と、私の子供を慈しみ、どうか末永く真実の恋人と添い遂げ、私には叶わなかった夢を、この忍月で叶えて下さいませ。
幸あらんことを。
長文、乱文、お許し下さい。
お元気で
かしこ
忍月美幸 多恵 茂美』