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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
「本家には何度も通うことにはなると思うけれど、俺……、会社に行く前にしたいことがある。今回お世話になった人達への挨拶を先にしたいんだ」
「うん、そうだね」
朱羽はスーツに、あたしは着てきた着物に着替え、当主や渉さん達に、ひとまず会社に出て、会長の様子も見てみると告げた。
それしか言っていないのに、
「先に挨拶するんだろ? 真下家、名取川家。俺達は無関係じゃねぇんだぞ。駄目後継者と、相手に思わせるなよ」
苦笑しながら渉さんもついてくる。
「ワシも行くぞ。孫だけにやらせてたまるものか。ワシの責任なのだから、ワシも行く!」
「……金魚のフン……」
ぼそっと朱羽が呟き、あたしは失笑してしまった。
***
「衣里~っ!!」
「陽菜~っ!!」
「うわあああん、ありがとうね、衣里。衣里のおかげだよ!」
「なにを言ってるのよ、あんたが頑張ったからでしょ、LINE見て、私泣いたんだから! ……ぐすっ」
「あたしも送りながら泣いちゃったよ、涙の海に溺れたよ!」
「あんたはカワウソなんだから、溺れるわけないでしょ、ぐすぐすっ」
一週間ぶりとなる友との再会。
衣里は長い髪をポニーテールにして、ジーパンとブラウス姿で居た。
名取川家よりは小さいけれど、大きな和風のお屋敷の中に居る姫のくせに、いつも通りの格好がアンマッチで。
それでもその格好で居られるだけ、ご両親は衣里を理解してくれたのかなと思うと、嬉しくなる。