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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
「朱羽が居る限り、シークレットムーンは大企業となり忍月財閥を支えられるものになります。朱羽が導きます」
「はい。私はまだまだ若輩の身、もっとたくさんの知識と経験が必要です。シークレットムーンは、私を育ててくれる会社です。その社員は、その人材は、誰一人欠けてはいけない存在で、化学変化を起こして未知数となる……そんな会社なんです。私が大きく育ったその時まで、渉さんには頑張って貰いたいと思います」
衣里がここに居るということは、シークレットムーンに勤めることをまだ許して貰えていないということなんだろう。
彼女の生き方や会社に対する熱情は認めても、シークレットムーンという会社は真下家にとっては小さすぎる。
しかしそれが、真下家も一流大企業と認める会社と並ぶくらいになるのだとしたら、反対する余地もないことになる。
隣の衣里を見ると、衣里は唇を震わせていた。
朱羽が一歩下がって頭を下げた。
「この度は真下さんを巻き込み、申し訳ありませんでした。まずはお恥ずかしい身内の事情をさらしながらも、見守って下さったことに対するお礼と、衣里さんという素晴らしいお嬢様が相手ながら、お見合いをお断りする無礼に対する謝罪を申し上げます。そして……」
朱羽は顔を上げた。
「見合いとは別の意味で、衣里さんを頂きたくお願いに上がりました」
「忍月の使用人にでもするのかね?」
笑いながら、衣里の父親は言う。
「いいえ。私と陽菜が勤めるシークレットムーンに、衣里さんを下さい」
その横で渉さんが頭を下げ、当主も頭を下げて言った。
「すべては私が孫達の気持ちも考えずしたことによるもの。わが孫である朱羽を助けるために、衣里さんは家に戻った」
「そうです。これは私の意志ではなく、娘の意志」
「そうさせてしまったのは、この老いぼれのわがまま。どうかワシに免じて、彼女を朱羽と陽菜さんと同じ会社に勤めさせては貰えないだろうか」
見合いでは、あたしと衣里が結託して当主から朱羽を奪おうとした。
しかし今、その当主があたしと朱羽と衣里を引き合わせようとする。
……人生とは本当にどう転ぶかわからない。
昨日の敵は、今日の援軍となるのだから。