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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
 

「あたし達には、衣里が必要なんです。衣里がいるシークレットムーンに、あたしも朱羽も帰りたいんです。どうか……っ」


「あはははははは」

「うふふふふふふ」


 笑い出したのは、衣里のご両親。


「いや、すまない。別に嘲笑ったのではないのだよ。実は……あなた達の前に、同じことを言いに来た男性がいてね。衣里をくれだの、衣里の居るところに帰らせてくれだの」

「え?」

 男性?
 
 もしかしてそれは……。


「結城さん、ですか?」


「そう。あの筋肉馬鹿」


 衣里が肯定した。


「そこで私達は結城社長に言ったのだ。もしもあなた達がこの見合いの収拾をきちんとつけにきて。そして頑なだったご当主が、お孫さんや陽菜さんの意見をちゃんと聞いて、それで見合いを破棄した上で謝罪をしたのなら」
 
「ええ。その時は、衣里を許しましょうと。もしもあなた達がいらっしゃらない時、もしもご当主がいらっしゃらず、もしも私達が期待をしていたことをなさって下さらなかったら、衣里の自由を認めずに見合いをさせようと。こちらとしても、あの見合いの席のようなご当主や、犯罪に手を出しているような美幸さんのところに、大事な娘をやれませんから」

「ふふ。結城社長は言ってたよ。朱羽さんと陽菜さんは必ずご当主と渉さんを連れて、衣里を取り戻しにくると。そういうことはきちんと出来る奴らだし、なにをしても衣里を取り戻しにくると」


 にこやかなご両親が、衣里を見つめる。



「で、では、衣里は……っ」


「必要とされるところに行くのが一番の幸せ。結婚とはまた違う形で、衣里が幸せになるのなら」

「ええ。反対する理由はない。だけど……顔を見せに戻ってきなさい。いいわね、それが条件よ」

 優しいご両親の顔。

 あたしの知らなかった、血の繋がった親からの愛情がここにある。


「は、はい……っ、ありがとう……ありがとうっ」


「衣里、よかったね。また一緒に頑張ろうね!」

「うん、陽菜。陽菜、よかったぁぁぁ……っ」


 あたしは衣里に飛びついて、またもや、わあわあ泣いてしまった。


 
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