この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
「しかし、あなたとはとうのとっくにきっちりと別れたはずなのに、こうもご縁が出来てしまうのは、正直なところ複雑ですわね」
すると当主は途端に口籠もるようにして言う。
「あ、ああ……。え、縁があるのなら……っ」
え、まさかの復縁!?
「私は主人がいます! まだ直らないんですか、浮気癖!」
くわっと目をつり上げて怒る名取川文乃に、冗談だと言いながら縮こまる当主は、どう見ても落胆しているように思えて、あたし達は笑ってしまった。
一通り談笑して、あたしはまた日を改めて挨拶に来ると、彼女に告げた。
当主にはつーんとしていた彼女だったが、あたしを見て満足そうに笑うと、あたしの手を取り、
「よく頑張ったわね。よくここまで頑張りました。母はあなたを誇りに思います」
そう言ったから。
「ふぇぇ……」
「また酷い顔になるわよ、朱羽さんに嫌われたいの!?」
あたしは泣きたいのを、ぎりぎりで踏みとどまった。
「あなたはまだ子供のところがあるのね。……朱羽さん、こんな陽菜ですが、これからも愛してやって下さいね」
「はい。然るべき時が来ましたら、その時は改めてご挨拶にお伺いさせて頂きます」
「まあっ、おほほほ。その時はその金魚のフンは要らないわ。あなただけがいらしてね、おほほほほ!」
「金魚のフン……」
「なんのことじゃ?」
渉さんと当主が顔を見合わせているのは、勝手に進められている話の意味するところがわかり、真っ赤な顔になってしまったあたしには見えていなかった。