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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
 


「しかし、あなたとはとうのとっくにきっちりと別れたはずなのに、こうもご縁が出来てしまうのは、正直なところ複雑ですわね」

 すると当主は途端に口籠もるようにして言う。

「あ、ああ……。え、縁があるのなら……っ」

 え、まさかの復縁!?

「私は主人がいます! まだ直らないんですか、浮気癖!」

 くわっと目をつり上げて怒る名取川文乃に、冗談だと言いながら縮こまる当主は、どう見ても落胆しているように思えて、あたし達は笑ってしまった。

 一通り談笑して、あたしはまた日を改めて挨拶に来ると、彼女に告げた。

 当主にはつーんとしていた彼女だったが、あたしを見て満足そうに笑うと、あたしの手を取り、

「よく頑張ったわね。よくここまで頑張りました。母はあなたを誇りに思います」

 そう言ったから。


「ふぇぇ……」

「また酷い顔になるわよ、朱羽さんに嫌われたいの!?」


 あたしは泣きたいのを、ぎりぎりで踏みとどまった。

「あなたはまだ子供のところがあるのね。……朱羽さん、こんな陽菜ですが、これからも愛してやって下さいね」

「はい。然るべき時が来ましたら、その時は改めてご挨拶にお伺いさせて頂きます」

「まあっ、おほほほ。その時はその金魚のフンは要らないわ。あなただけがいらしてね、おほほほほ!」


「金魚のフン……」

「なんのことじゃ?」


 渉さんと当主が顔を見合わせているのは、勝手に進められている話の意味するところがわかり、真っ赤な顔になってしまったあたしには見えていなかった。
 
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