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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
 


 ……あたしが望むのは間違いかもしれないけれど、それでも結城も、また新しい道をと願ってしまう。

 どうなんだろうね、結城は。

 持ち前の責任感からなのか、それとも男として衣里を奪いにいったのか。

 正直、結城と衣里の間に恋愛感情があるのかと問われれば、答えに苦しむ。結城はひとあたりがいい上に、やはり同期の結束は固いから、ひとよりは衣里に接するのは特別で。あたしと比べれば、あっさりしてはいる関係だけれど、それでも……、少しずつだけれど、ふたりの距離は近づいているようには思える。

 同期よりももっと固い絆というか。
 その正体がなんなのかは、あたしには見えない。


 病室のテーブルを雑巾で拭いてあれこれ考えていると、朱羽があたしの下げていた頭を人差し指でノックする。


「陽菜の浮気者」


「はああ!?」

「結城さんのことばっかり考えていただろう」

 コンコン、コンコン!

「そ、そんなことは……」

 痛くはないけど、音が響く。
 どうせ脳みそ少ないですよ。

 会長と、渉さんと当主が話している。

 帝王ホテルで相対したような、そんな緊張感や物々しさはなく、普通ににこやかに会話しているように思える。

 当主も、渉さんや朱羽を理解したくて必死なのだろう。
 ……金魚のフンになるほどに。


 朱羽は言った。


「もうそろそろ、行こうか」

「……うん」

「俺達の戻るべき場所に」


 シークレットムーンに。


 
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