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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
「な、なに!? なにごと!?」
クラッカーの中の細長い紙を頭に乗せながら、驚いたあたしはきょろきょろとあたりを見渡す。
「お疲れ様っす、鹿沼主任!」
きらきら金色に光るモールがぐるりと縁についた、紙製とはいえ、メタリック調のドピンクに、銀色の星が散っている……派手な三角帽子を頭の上に乗せた、木島くん。
「お帰りは、今か今かと待ち構えていたっす!」
クリスマスにはまだ早すぎる。
忘年会にも早すぎる。
……なんでスーツ姿でそんな変な帽子被って、会社にいるんだよ。
お客さんびっくりして帰っちゃうじゃないか。
しかし、この、常識から外れたところを真顔でやってしまうのが、さすが木島くんだ。
呆然唖然としながらもほっとしているあたしの心は、そこまで疲れていたのだろうか。
「し、仕事は!?」
わらわらと社員が集まってくる。
完全に仕事着姿で、へんなのを頭に乗せているのは木島くんだけだ。
杏奈がにこやかに言った。
「お帰り、鹿沼ちゃん、香月ちゃん!」
杏奈もスーツ姿で髪をまとめていると、肉感的な美人秘書だ。
上着の胸元がはちきれそうなのに、ウェストはゆるゆるで羨ましい。
「課長!」
「主任!」
たくさん社員が出てきて、あたしと朱羽を取り囲む。
皆手にクラッカーの残骸。
全員があたしと朱羽の帰還を祝ってくれたようだ。
「木島くん、それどうしたんですか? お似合いですが」
……朱羽も木島くんの帽子が気になったようで、お似合いもなにもミスマッチ過ぎる木島くんにおべっかを使って尋ねる。
「そうっすか!? 俺も妙に似合うなって思ったっすよ。これはクラッカー30個入りを買ったら、無料でおじさんがつけてくれてくれたっす。俺に似合うから、特別におまけらしいっす。うわーい、香月課長からも褒められたっす! 三上さん、俺どうっすか?」
「うーん、杏奈は趣味じゃない」
「がーん!」
木島くんはショックの言葉を口にして、慌てて帽子を外した。
強いぞ、杏奈!