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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
いつもの会社なのに、いつも以上に賑やかでそして仲が良く思えるのは、あたしが会長の病室に居た間に、皆が団結してまとまったからだろう。
あたしが抜けていたというのに、こうして熱烈に声をかけて迎えてくれるのが嬉しくてたまらない。
全員が朱羽奪還に帝王ホテルに来てくれたんだ。
沢山の"お帰り"と沢山の"お疲れ様"。
あたしも朱羽も、シークレットムーンの一員でよかったと再認識する。
ひとりの若い女性社員が泣き始めた。
「我慢していたのに、なんで泣くんだよ」
「だって……全員揃ったから。ようやく戻ったって感じがするから。会長は入院しているけど、最強のメンバーが揃ったから、今までの苦労が報われたと思ったら、涙が止まらない」
「やめろって、しんみりするなって結城社長が言ってただろう?」
「そういうお前も泣いてるじゃないか。うわ、俺もだ」
「私も」
「ぐすっ」
「……って、主任まで泣かないで下さいよ」
「そんなこと言ったって」
周りも泣くなら、あたしもつられちゃうよ。
あたしだって我慢していたんだから。
朱羽と目があったら、朱羽まで目をうるうるとさせている。
朱羽が優しく頭を撫でてくれるから、またあたしは泣いてしまった。
くそっ、反則だよ!
せっかく化けてきたのに、逆戻りじゃないか!
朱羽が皆に感謝の言葉を述べる。
そしてこれからもシークレットムーンに勤められること、これからも仲間として頼むと頭を下げたら、拍手が湧いた。
……衣里はわかるけど、結城がいない。
「結城は?」
「結城さんは……」
社員が躊躇うようにして顔を見合わせた。
なに、なにが起きたの!?