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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
朱羽の事情を察して結城は気まずそうな顔をして頭を掻いたが、ばんと大きな手で朱羽の背中を叩いていう。
「だったら今から覚えておけ。俺も一緒にやってやるから。お前右な、俺が左」
「なんで俺が右なんですか?」
……ちなみに、左側にあたしがいるから、きっと邪推しているはずだ。
それを結城は、豪快に笑いながら言う。
「そりゃあ、お前は俺の右腕だからだよ。文句あっか?」
「……。いえ……」
朱羽はすましているが、嬉しそうだ。
結城がカウントダウンをして、男二人仲良く同時に火を消した。
誕生日ではないのに用意された誕生日ケーキ。
だけど、あたし達の帰還祝いということで用意されたケーキ。
パチパチパチと皆が笑顔で拍手をしてくれたから、朱羽ははにかんだように笑った。
そして結城がこほんと咳払いをして、あたしと朱羽を見る。
社長としてなにか言うのかと思ったら、結城はにっといつものように人なつっこい笑みを見せて言った。
「おかえり」
そして両手を少しあげて、手のひらをあたし達に見せる。
「「ただいま!」」
あたし達は、パーンと小気味のいい音をたてながら、その手を叩いた。
……戻って来た、あたしの家族のもとに。
戻って来た、あたしの日常――。
……鹿沼陽菜、ただいま戻りました!