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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
***
「よし、じゃあ会長は専務……じゃねぇよな、渉社長に任せて、全員揃った記念として本日は仕事始めだ! 五時半に終わったらケーキもって、全員で病室行くぞ!」
「「了解です、社長!」」
月代会長が社長の時はぐうたらしていたから、社員が頑張らないと潰れると思ったものだが、結城が社長になると皆ノリがいい。
やはり結城は、パワーがあるのだ。
あたしと朱羽も仕事をすることになったのは、丁度ケーキを食べている最中に、朱羽のスマホに渉さんから、仕事をしたいのならそれまで病室にいるからやってこいと連絡があったらしい。
正直あたしも、矢島社長の菱形タブレットが出来上がってくる時期だし、タブレットでの応対は辛いところ。
あとは引き続き契約を続行してくれる会社の担当者にお礼のメールを送りたいとも思っていたし、なんだかんだとパワーのある自分のパソコンでの作業を一気にしたいと思っていた矢先のことだった。
結城が社長になって初めて揃った全員での仕事だから、今日はちゃんと仕事をして、会社は大丈夫だと会長のところに報告に行こうということになった。
誰もが、朱羽が抜けない「全員」であることにテンションをあげて、パソコンを使った作業や電話や外出する営業だとか、今まで以上に精を出す。
「圧倒されますね」
さすがに会社ではあたしは上司には敬語を使おうと思う。
せっかくチームワークが取れている時に、公私混同するのはよくない。
今までは朱羽と付き合っていなかったから普通に敬語だったけれど、いきなりタメ語を皆に聞かれるのも……。まあ今更だけど、けじめは必要だ。
「ええ。私達も頑張りましょう」
朱羽も同じ事を思ったのか、課長の言葉遣いに戻った。
なんだか背中がむずむずする。
すらりと見える背広を着て、髪をセットして。朱羽のこうした理知的な美貌を際立たせる仕事姿は懐かしいのと同時に新鮮で、彼に慣れ親しんだあたしの精神を、さらに高揚させるのだ。
いつぞや朱羽に言われたことがあるが、やはりあたしは、朱羽の上司モードに弱いらしい。