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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
あたし達はWEB部の隣り合った席に座る。
前はなんでこんなに近いんだと思ったけれど、今ではこの空いている距離が心寂しく感じるほど。
朱羽とまた仕事が出来るんだと思ったら、嬉しくて仕方がなかった。
顔を上げれば、いつもの光景。
杏奈はサーバー室と自席を行ったり来たり。サーバー管理やプログラムをしているらしい。
木島くんはいつもの通り分厚い唇を開けて、パソコン画面を食い入るように見つめ、WEBデザインをして。木島くんだけではなく、WEB部の誰もがWEBにDTPにと仕事に忙しそうだ。
木島くんの奥に座る結城は電話をしていて、隣に座る衣里は、傍で立ってなにかを尋ねているらしい部下達に指示している。
営業部もいつもの光景。
そして経理でひとり残った女性社員は、今居る社員の全リストを作って、きちんとお給料が出るように処理してくれている。
こんな景色を会長が見たら、泣き出しそうだ。
一度は底辺に落ちそうになったシークレットムーンは、ぎりぎりのところで踏みとどまり、ここまで活気を戻したのだ。
営業は結城と衣里を中心として仕事をとってきて、WEB部は顧客のイメージを形にして、次に繋げる。それを杏奈とWEB部のシステム開発課が顧客に提案出来るプログラムを作る――。
その一連の流れを見ながら、あたしは歓喜に泣き出しそうになった。
結城は社長になったからといって、二階の会長のいた社長室を使用したり、新たに個室を作ろうとしなかったらしい。
――ガラじゃねぇって。あそこは月代名誉会長の部屋。戻って来たら会長室にして、俺は皆の顔を見ながらバリバリやりてぇんだよ。そんな社長が居てもいいと思わね?
――二階あがりたいなら、重役の部屋とっちまってもいいぞ。どうだ香月。
――謹んで辞退いたします。俺が部長になる前に、三上さんを昇進させて下さい。
――はは。それは考えてるって。お前と真下と三上が課長でタッグ組めるようにさ。俺、最強の課長軍団作りたいんだ。お前しばらく課長な。
呵々と結城は笑った。