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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
パソコンを止めてそんなことを考えていると、朱羽のカタカタが止まった。
「主任」
顔だけこちらに向けた朱羽は、ふっと口元を綻ばせた。
気づいたら営業が居ない。
「オフィスでの仕事と同時に、ラブもあること、お忘れ無く」
「は、はい?」
突然なんなんだ?
「仕事だけでも駄目、恋愛だけでも駄目。俺、オフィスラブは初めてなので、そのさじ加減、よろしくご指導願います」
ご指導って……。
「あたしだって初めて……って」
朱羽の手があたしの手を握って、机の下で指を絡めて握られ、あたしはびくっとして肩を竦めさせてしまう。
涼しい顔をしたままの朱羽は、前のシチュエーションとはまた違い、あたしが嫌がっていないことを見抜いて、そのまま……なにかを拾うふりをして横を向いて頭を下げ、あたしの手の甲に唇をつけた。
「なっ……」
神聖な職場で、神聖な騎士のような仕草。
どこまでも崇高に見えるのに、あたしを捕えるような鋭い切れ長の目だけが野生的にも思えるほどで。
どくんと心臓が大きく鳴った。
そんなあたしを見た朱羽はふっと悪戯っ子のように笑い、あたしを見るその眼差しを優しいものに変えた。
……愛おしいと、言っている気がして……あたしの心臓は今度は早鐘を打ち始める。
いまだ朱羽のこうした表情に惹き込まれて、恋心を煽られる。
会社なのに。
あたしと朱羽は、上司と部下でもあって、示しがつかないのに。
そう思えど、惹かれてやまない上司の男――。
軽く睨むと、朱羽は小声で言った。
「……嬉しくて。またこうして仕事が出来るのが」