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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
朱羽がゆっくりと社内を見渡し、最後にあたしで視線を止めた。
まるで流し目のような艶やかな目を細めて、彼はおよそ場違いなほど艶然と微笑む。
その誘うような口元に魅せられて――。
「おーい、香月! ちょっといいか!」
ミーティングルームから結城の声がして、陶然とした顔で吸い込まれそうになったあたしは我に返り、朱羽は、
「残念。あなたからと思ったのに」
そう言うと、二度目の結城の声に破顔した。
「結城さんに呼ばれているので、行ってきます」
「いってらっしゃい」
朱羽は結城に返事をしながら、颯爽と大好きな友達の元に行く。
朱羽が必要とされ、朱羽が必要とする仲間がここにはいる。
そして、あたしは――。
「陽菜!」
「鹿沼も来いっ!!」
「はーいっ!!」
直後、同期からお呼びがかかったあたしは嬉しくなって、朱羽の後ろ姿を追いかけた。
共の時間を生きれることに、感謝しながら。