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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
「土曜日はあさって、ちょうどよかったな。沙紀さんも頑張っているだろうから、せめて土日休ませてあげたいわ」
「……迷惑かけるね」
「朱羽や渉さんに比べたら、全然だよ。協力出来ることはしたいし」
「ありがとう」
「どういたしまして」
いずれ当主となる朱羽の肩に背負うものを、あたしが代わってあげることができないけど、せめて朱羽が落ち着ける環境を作れたらと思う。
きっとそれは沙紀さんも同じ。
頑張る沙紀さんを見て、渉さんも頑張れるはずだ。
吐く息が白い。そんな夜道の寒さも、朱羽のコートのポケットの中に手を握られたまま突っ込まれたから、そこまでの寒さは感じずにいられる。
「あれ、駅は右だけど」
突如右折しようとした朱羽に、あたしは声をかける。
「ちょっとね、寄りたいところがあるんだ」
「どこ?」
「秘密」
行き先は教えてくれなかったけれど、しばし歩くと、通行人で湧く大通りに出た。
「あそこ」
朱羽が教えてくれた先――。
「うわあああ、綺麗~っ!!」
あたしは、目を見開いて感嘆の声を上げた。
大通りの両脇が、色とりどりのイルミネーションで飾られていたのだ。
街路樹にはLEDが星のように無数に散らばり、道脇には定番の花模様だけではなく、雪だるまとかシンデレラが乗るような馬車だとか、わかりやすいオブジェが明るく点灯していて、それを眺めながら通り抜けられるようになっているらしい。
夜空には雲がかかっているのか星が見なかったけれど、見えないのは星が地上に降り注いで形になっているからだと思わせる。