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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
「ちょっとね、羨ましかった」
「え?」
光の洪水の中で、朱羽は途端顔を傾け……あたしの唇に、彼の冷たい唇を押しつける。
そしてポケットの中の手を離すと、あたしの腰に手をまき付け、ぐいと彼に押しつけるようにして抱きしめながら、長いキスを続けた。
あたし達に向けて、羨望やら揶揄やら様々な眼差しが向けられるのに、どこか優越感に浸りながら、あたしも朱羽の背中に手を回して、その甘いキスに蕩けていく。
この前は天然の星の中。今はその星が落ちた光の中に佇みながら、寒さなどなにも感じさせない朱羽の唇から伝わってくる熱が心地よく、唇が離れた後も朱羽に抱きついていたくて、朱羽の胸に頬をあて、キスの余韻に酔い痴れた。
朱羽に甘えていたくなる。
朱羽があたしの頭上に唇を落としながら、後頭部をやさしく弄る。
「陽菜……好きだよ」
喧噪をものともしない甘い声が星のように落ちて。
それを受け止めたあたしの胸奥もまた、愛という名の光が瞬き、星になる。キラキラと輝き煌めき続ける。
言葉に出来ないほど愛情が胸に溢れ、泣きそうな顔で朱羽を見る。
「あたしも……」
それだけで涙声になると朱羽は切なそうに微笑み、ちゅっと啄むような軽いキスをしてあたしを見る。
熱に潤んでとろりとした茶色い瞳が、光の残像に色を変える。
その目に魅入られたあたしに、またちゅっと軽く唇が重なって離れた。
絡む視線は熱く、呼吸も乱れ。なにがしたいのか十分にわかっているのに、唇が繋がる時間は短く。
焦れったい。
せがむように、朱羽のコートを掴んで小さく引いた。
「……したい」
「……っ」
やがて堰を切ったかのように荒々しく唇が奪われ、朱羽はあたしの手を掴むと彼の首に巻き付かせた。
熱い視線をかわしたまま次第に深くなる口づけに、周りの視線も気にならなくなるほどに、あたしも夢中になって朱羽が授ける熱を求める。
涙を流すほど、嬉しくてたまらなかった。