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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
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「陽菜」
「………」
「陽~菜」
「………」
「こっち向いて?」
……唇が離れ、我に返ること数秒。
「照れてるの? 恥ずかしいの?」
「……人前であんなことするなんて……。人目を気にしないでいちゃつくバカップルなんて、ケッと思っていたというのに……よりによってこんなに大勢の前で」
「俺はどこでもあなたといちゃつきたいけど」
「だけどこんな人混みの中で」
「俺達を見て、羨ましいって言われたの、聞いていた?」
「え? し、知らない……」
「言われていたんだよ、俺達も。……羨ましかったんだ、俺。あなたが照れて視線を外した、あのキスしていた恋人達が。俺、どんなところでも好きだと伝え合えるあのふたりが羨ましかった」
「……っ」
朱羽は、ちゃんと見ていたのか。
「俺もあなたとしたかった。誰かに羨ましがらせたかった。……誰もが近づくことが出来ないふたりの世界があるのだと、見せつけたかった」
「………」
「あなたが、好きだよ」
不意打ちのように心に入った朱羽の言葉は、熱すぎて。
あたしは朱羽の腕に抱きついた。
「ふふ、抱きつくなら真っ正面からおいで?」
「……駄目。永遠にキスしていたくなるもの」
「え?」
「……朱羽だけじゃないよ。あのふたりを羨ましいと思ったの。キスをしたいと思ったのは、朱羽だけじゃないよ? ……ありがとう」
「はぁ……」
朱羽はやりきれないというように、頭をがしがしと掻いた。