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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
 

「あたし、まずいこといった?」

「今夜はあなたと抱き合って寝ようと思ったけれど、ただ寝るだけではすまなくなった。明日、寝不足のまま出勤決定」

「え? 朱羽、連日寝不足で、疲れてる……」

「煽られたから、疲れも吹っ飛んだ」

「べ、別に煽ってないよ、本当のことを言っただけで……」

「それが煽っているって言うの! なんで"ありがとう"なんだよ、それを聞いた俺が、もっとしたくなるの計算していってるのか!?」

「は、はあ!? 計算なんて……」

「くそっ、こんな道中で煽られてどうするんだよ、俺! なんであなたの前でいつも俺は……! 帰るよ!」

「……ちょ、ちょっと待って! 写メ撮りたい!」

 あたしの手を引き歩き出した朱羽は振り返り、責めているようないじけているようなそんな表情を向けた。

「ご、ごめん。記念に残しておきたいの、このイルミネーション」

「………」

「ちょっと待っててね。あ、あれも可愛い。やーん、あっちも」

「………」
 
 パシャパシャと写メを撮っているあたしの背後で、朱羽の声が聞こえた。

「……すみません。写真、撮って頂けますか? あ、あなたのスマホで俺を撮るのではなく、彼女のスマホで俺と彼女を。はい、まぎらわしい言い方をしてすみません」

 暗闇の中、色を変えるイルミネーションが、朱羽の輪郭を曖昧にさせたのか、さほど朱羽に興味を持たずに、にこやかな笑みで写真を撮ってくれた。

 シンデレラの馬車の前に、あたしと朱羽が寄り添った写真。
 フラッシュをたいたからよく朱羽の顔を見れて、嬉しくなる。

「俺のところに送って」

「えー、あたし独り占めしたい」

「駄目! 初ツーショットなんだから、俺も欲しい」

「そうか、一緒に写真撮ったことなかったね」

 そう言いながら、あたしはLINEで写真を送る。

「これからはいっぱい撮ろう。あなたと俺の思い出を」

 点滅していたイルミネーションが長く点灯し、朱羽の美麗な顔を浮き彫りにさせた。

「うん……」

 頷くと、朱羽があたしの肩を引き寄せながら歩き始める。
 
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