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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
 


「すげー、カバみたい」


 知らぬ間に向かい側に、見知らぬイケメンが座っている。

 あ、このひと知っている。

 この浅黒い肌と黒髪パーマのワイルド系のイケメン、そうそう前にも見たの。沢山の女を侍らせている、確か忍月コーポレーションの専務で名前は忘れた。

 凄い強引なやり手だと、この食堂で女子社員が噂をしていたのを耳にしたことがある。うん、あの時は遠目だったけれど、この黒髪パーマはそうだ。

 年はあたしと同じくらいか、それより上か。


 つまり、玉の腰の相手が、今目の前にいる。


――すげー、カバみたい。


 カバ……って誰?

 まさかあたし!?


「ぶはっ!!」


 思わず吹き出したら、うどんが彼の頭に乗った。


「あ」


 すると周りの女性達がハンカチを出して彼の髪を拭いたりと、至れり尽せり。


「子供じゃないんだから……」


 思わず嫌な顔をしてそう言ったら、美人過ぎるお姉様達は一同声を揃えて言った。


「お黙り、このカバ!!」


 はいはい、カワウソの次はカバですか。

 どうしてもあたしは沼系なんですね。


「失礼致しました」


 立ち上がって空いている席に移動しようとしたら、専務が偉そうな態度で、指で下をさした。


「座って」

「いや、違うところで食べますから、どうぞお姉サマ達と……」

「座れ」


 なんだこの不遜な男は。あたしはあんたの部下でもなければ、他社の社員だぞ!

 だけど鋭い目をされたから、思わず座ってしまった。


 彼もお姉サマの手にも食器はない。

 もう食べたのかこれからなのか。


「お前、もしかして鹿沼陽菜? シークレットムーンの?」

「な、なんで……」


 すると、専務はあたしが首から提げてある身分証を指し、思い切り腹を抱えて大爆笑。女達にお腹をすりすりされている。

 お前はどこの坊ちゃまだ。

 まるで社長のような笑い上戸さだ。
 
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