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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
「まあ、向島案は、三上さん了承の元ですね。三上さんが長として動くから、かつての部下であるということが、やりやすいと思うのか、扱い辛いと思うのか。三上さんひとりで動いてますけれど、教え上手だと思うんですよね。俺のように協調性がないわけではなさそうだから、そこらへんは心配ないかと」
「他にあてはねぇのか!? そのふたつ以外に」
「ありませんね。素性がわかってすぐに使えそうな集団は、そのふたつだけです」
眼鏡のレンズがキランと光った。
「二大財閥の次期当主がいる会社から、社員奪うのか!?」
結城は机の上に両肘を乗せて、頭を抱えた。
「渉さんの方が説得しやすければ、渉さんで。だけどあのひと、仕事の鬼ですから、具体的な見返りを提示しなければ納得しないかもしれません。幾らここを財閥直下に引き上げるとはいえ、社員をごっそり別会社に移動するわけですから、きちんと理由がないと。結城さんは株主総会で株主を説得出来たんだし、お手のものじゃないですか?」
「……うわ……、またあの頭パンクしそうだった経済学を引用して、説明しないといけねぇわけ?」
……見るからに、渉さんが教え込んだ経済学の知識は、結城の頭から抜けているようだ。
「だったら、向島専務の方がいいですかね?」
「俺、あのひと苦手なんだよ……」
「へぇ、結城にも苦手なひとっていたんだ?」
「鹿沼、そこが焦点じゃねぇから」
「まあ向島専務は一撃必勝です。あのひとは負けを認めたら急に素直になりますから」
「頭脳派のお前だからあのひとをなんとか出来たんだろう!?」
「俺は結城さんのはったりを真似しただけですから。まあ三上さんが納得したら、ですけれどね」
「三上が納得しなかったら、俺渉社長に経済学レクチャーするのか!?」
「結城、あとは別の方法を考えればいいんだよ。三日くらい寝なかったら、きっとなにか……」
結城があたしを睨み付けた。
「それで出てくると思うか? 香月が選択肢はふたつしかないと断言しているのに、俺の頭で香月を超えた妙案、出てくると思うか!?」
……出てこないね、うん。
あたしは笑って誤魔化した。
「三上に聞いて、どっちにするか考えてみるわ……」
結城は引き攣った笑いを見せた。