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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
 
 
 朱羽が苦笑しながら、自分のパソコンの電源を落とす。

「ずっと残業して、帰ってもすぐ寝ちゃってたから、プレゼント後で用意しようと思いながら、買ってなかったね。俺達も買いに行こうか」

「うん」

 あたしの画面も、パソコンの電源が切れると同時に真っ暗になる。


「さ、あたし達が最後だ。戸締まりして帰ろう」

 椅子の上で両手を上げて伸びをしながら、下に置いてあるバッグを持ち上げている間、朱羽が椅子に座ったままキャスターをころころ転がして来たことを知らずして、気づけば朱羽の両手であたしは宙に浮き、あたしは彼のお膝の上。彼を正面に、足を広げて座っている。
 
「ちょ、朱羽……っ」

 タイトスカートが捲り上がって、ストッキング越しのショーツが見えそうなくらいに、はしたない格好をしていることが恥ずかしい。

 もじもじとスカートの生地を伸ばすのだが、伸びる生地でもなく。

「どうした?」

 わかっているくせに、指を絡ませるように手を握ってくる。

 当然、スカートの生地は元通り捲り上がったまま。
 
「どうしたじゃなく、下ろして……」

「駄目。言っただろう、帰っても寝ちゃってるって。……セックスも出来ないくらい、あなたは深い眠りについていて」

「それはわかったから……」

 出来るだけ足をとじようとするが、もぞもぞとする様は、なぜか朱羽の目を妖しく光らせる。

「誘ってる? 俺のに刺激与えてるの?」

「違う! スカート下ろしたいのっ」

 場所を意識しちゃったら、もう動けないじゃないか。


「鹿沼主任」

「は、はいっ!」

 ……反射神経とは恐ろしいくらいに、背筋を正して従順に反応する。

 茶色い瞳が、じっとあたしを見つめた。

「やじまホテル、よくがんばりました」

「ぅえ?」

 そんな話題になるとは予想もしておらず、あたしは素っ頓狂な声で返してしまった。

「あなたがあの環境の中気を回して、斎藤社長と連絡とりあって完成させた菱形のタブレット、素晴らしかったです」

「……っ」

「まずはあなたに、上司としてそれをきちんとあなた個人に言うべきだったのに、今になってしまいすみません」
 
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