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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
「久しぶりの夜のデートだね。陽菜へのプレゼントは、明日用意する。明日こそ、帝王ホテルのスイートに泊まるからね」
初めて結ばれたのが、帝王ホテルのセミスイート。
初めてのクリスマスは、スイートらしい。
……あの、幾らするのかわからないスイート……。
――もう予約とってあるんだから、キャンセルはしないから。いいじゃないか、あなたと過ごす特別なクリスマスなんだから。
最初に聞いた時、度肝を抜いた。
おうちでクリスマスでもよかったのに、朱羽は初めてのクリスマスに特別な意味をもたせたいらしく、既に帝王ホテルのスイートは予約していたらしかった。
「なにがいい? なんでも好きなもの、あげる」
「スイートだけでもう一生分のプレゼントだから。それだけでもうなにも考えなくていいから」
「それじゃあつまんない」
やがて目的の、大通りの脇にあるショッピング街が見えてきた。
「洋服? ハンドバッグ? なにがいいかな」
そう言われると、あたし朱羽のプレゼントなににしよう。
スイートを超えるものは、どう逆立ちしても無理だ。物理的に金銭的に。
あたしは朱羽に、マフラーをあげたいと思っていたんだけれど、それじゃあ駄目かな。いつもマフラーをしないで行き帰りしているから、寒そうで。
――陽菜にくっついていればあったかいから。
……よし、せめてブランドもののマフラーにしよう。
手袋は……手を繋げなくなるのもちょっとね。
「あたしはキーケースがいい。会社の鍵とかぶら下げているケース、古くてぼろぼろだったから」
「キーケース?」
「うん。あたしが欲しいのはキーケース。よろしく!」
朱羽は不満足そうな顔つきだったけれど、確かにキーケースは欲しかったものだから。
「じゃあ待ち合わせはこの柱時計があるところで、八時。それまでにプレゼントを用意しようね」
朱羽とあたしは別れた。