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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
***
クリスマス会当日――。
「では、幹事に代わりまして、社長になりました、この結城が……」
「照れるな、むっちゃん社長!」
あたしが野次を飛ばすと、
「むっちゃん言うな!」
結城が怒って、笑いが起こる。
「この度は会長や社員の皆と、そして矢島社長、名取川さん、そして渉社長、沙紀さん、忍月のご当主、お世話になりました!」
「……おい、結城。俺は?」
「結城社長、私はぁ?」
……なんと、向島専務と千絵ちゃんが会長の見舞いと贖罪のケーキをもって病室に現われ、クリスマスパーティーに(招いていなかったのに)参加することになったのだ。
険悪になるかと思ったけれど、やはり朱羽を取り戻すための"監視役"の場において、株主総会でも助けてくれた向島専務と、そして千絵ちゃんの決断を皆が称え、皆が輪の中に入れたのだ。
……ひとり、渉さんがぶつぶつ言っていたけれど、それでも友情が回復する兆しが見えるふたりだから、こうして賑やかな場に共にいれるのは、嬉しいことなのだろう。表情は柔らかい。
千絵ちゃんは、あたし達が忍月本家に行っている間、そうあたしにLINEでひと言寄越した時には、シークレットムーンにひとり行って、今までしてきたことを床に両手をついて泣きながら謝ったそうだ。それはあたしと朱羽、渉さんと沙紀さん四人だけ、今日知ったことだったのだけれど。
その時、皆がどんな言葉を彼女にかけたかわからない。
だけど、千絵ちゃんをこうした内輪のパーティに招こうとした皆を見ていると、拒絶で終わったわけではなかったんだろうと思う。
確かにこの兄妹のせいで、シークレットムーンは窮地に陥った。
だけどそのおかげで、朱羽を取り戻すことができ、結城が率いる今のシークレットムーンがある。