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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon

「ちょっ、課長!! 落ち着いて下さい、どうしたんですか!?」
すると課長は、眼鏡の奥のギラリとした目をあたしに寄越した。
「渉(わたる)さんになにもされてませんか? いや、渉さんになにもしてませんね!?」
……どこかで聞いたことのある言葉だ。
「するわけないだろうが。ただのカバの鑑賞だ。お前も見るか、可愛いぞカバ」
「だからあたしはカバではなく、カワウソですってば!!」
あ、また省略しすぎてしまった。
課長、哀れんだ目であたしを見ないで下さい……。
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課長と並んで座り、向かいには腕を組んであたし達を見る他社の専務。その周りには専務の取り巻き達。専務オンリーだった彼女たちの目が、課長にちらちらしているのは、見て見ぬふりをしていてやろうじゃないか。
なんですか、この状況。
あたしはただ、ランチを食べにきただけだ。
洋食とか中華ではなく、しこしこのうどんを食べたかっただけなのだ。
うどんを食べていたら、なんでこの「お嬢さんを下さい」の図になったの?
「はい? なんですって?」
あたしは目の前の……宮坂渉専務に聞き返した。
「ああ、そこの朱羽は俺の親戚なんだよ」
「親戚……、そうなんですか」
「俺には似てないな、あまり。朱羽は五歳年下の従弟がいるんだが、そっちにはよく似ているな。機械いじりが好きなところも」
専務と課長はタイプが違う。専務はワイルドで、課長は都会派で。
いわばオオカミと猫みたいな感じだ。
……猫といっても、時折、魅了(チャーム)のスキルを持った艶やかな化け猫になるけど。
絶対このふたりって、エッチに強そう。
まあ、猫に教え込んだのはあたしだけれど。
そうか、課長似の猫がもう一匹いるのか。
見てみたい気もする。

