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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
皆が最高の笑顔になりながら談笑をする。
あたしはひとり会長の元に行った。
「どうしたカワウソ」
「会長、本当にありがとうございました。あたし達に還元してくれるなんて……」
「当然だろう? 矢島さんも名取川さんも、お前がちゃんと仕事をとってきた。たとえ香月や睦月らと協力しても、お前は俺が頼んだ仕事をこなした。本当はお前らにはたっぷりやりたかったんだが、一律3ヶ月分にした」
「あたし達、無給を覚悟していたんです。これは本当に……クリスマスプレゼント以外の、なにものでもありませんね」
あたしは出てきた涙を指で拭う。
「ひとつ、言いたいことが」
「なんだ?」
「さっきの膝掛けのことなんです」
……あたしは、どうしても衣里の気持ちを届けたかった。
「おお、俺好みだった。よく見つけたなあ」
「……衣里なんです。衣里が用意していたものなんです」
社長は複雑な表情をした。
「きっと衣里からだったら、社長は受け取らないだろうから、皆から渡したことにしてくれと言われて、ああいう形にしました」
「そうか……」
「会長。衣里の気持ちはご存知ですよね?」
「ん……」
「やはり衣里は駄目なんですか? 衣里が可哀想で」
「……鹿沼」
「はい?」
「お前ひとりの胸にしまっていてくれないか?」
「はい」
会長の目の先は、結城に怒っている衣里だった。
「……惹かれているよ、衣里には」