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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
「どうしたの?」
……この中に朱羽がいない。
「あれ、朱羽は?」
「主任……、俺達申し訳ないことをしてしまったっす」
「杏奈も……」
「いや悪いのは俺だって。うわー」
「私も悪かった。わかっているものだと思って」
「だからなに? 朱羽がどうしたの?」
結城がバツが悪そうに言った。
「……その、言っちまったんだ。"鹿沼の誕生日祝い奮発したのか?"って」
「うん?」
「そしたら香月ちゃん、知らなかったみたいで。だから杏奈達驚いて、"今日は鹿沼ちゃんの誕生日なんだよ"って言ったら」
「香月、はあああああ!?って怒って立ち上がって、出て行ったのよ」
「主任、隠してたっすか?」
「いや……隠すもなにも、聞かれてないし自分でいうものでもないでしょう。なんかプレゼントねだってるみたいだし。クリスマスおめでとうで十分だし。結城や衣里ともそうだったじゃん」
「陽菜……。友達と恋人は違うと思うよ?」
「え?」
結城が言う。
「男には2パターンあると思うぞ? 誕生日や記念日なんてどうでもいいと思うのと、そういうのを大切にするのと。香月は大切にする奴だと思う」
すると全員が頷き、あたしは渉さんを見た。
「あたし、誕生日朱羽に言っていた方がよかったんですか?」
すると渉さんと沙紀さんは複雑そうな顔をして言う。
「朱羽くん……、陽菜ちゃんは特別だからね」
「誕生日を知らなかったなんて、恋人失格だとか落ち込んでいるかもしれねぇな。怒っていても……数時間後には戻ってくるだろうが、朱羽との関係にヒビが入らないように祈るばかりだ」
「ええええ!?」
そんなにあたしの誕生日って大切だったの!?
今までクリスマスと一緒にされて、誕生日よりクリスマスの方ばかり優先されていたあたしは、飛び上がった。
「陽菜、私達メリクリというより、誕生日だから行ってたんだよ」
「そうだ。誕生日だから……」
「どうしよう!?」
「別れろ別れろ、プー。クリスマスなんてひとりで過ごせ」
向島専務のやさぐれたような声が聞こえる。
「冗談じゃない! あたし、朱羽追いかけます!」
「おい、カバ……」
「メリクリ~、みなさんよいクリスマスを~!!」
あたしは荷物を持って飛出した。