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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
 

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 電話が繋がらないこと二時間。
 
 LINEも既読にならない。


 家にもいないし、この東京を探し回るには東京は広すぎる。

 
 ため息をついた時、あたしのスマホが鳴った。

『もしも「朱羽、今どこ!?」』

『今、銀座だけど……』

 どこまでご立腹で飛出したんだろう。

「ごめんね、誕生日って大切だったんだね。あたし、クリスマスのおめでとうだけで十分で育ったから、だからあえて言わなかったの。今、皆に朱羽はきっと誕生日を……」

『陽菜、落ち着いて』

 一気にまくしたてて泣き始めてしまったあたしに、朱羽の慌てる声が聞こえた。

「ごめんなさい。別に隠していたわけじゃないの、だから別れるなんて」

『誰が別れるんだよ』

「え?」

『あなたの誕生日を聞いてもいなかった俺が悪いのに、なんであなたが泣いて別れるなんて言い出すんだよ』

「え、別にあたしが言ったわけじゃなく」

『誰が言ったんだよ、俺達が別れるなんて!』

 朱羽の声が荒くなる。

「いや……その、朱羽が怒って別れるって言うかなって……」

『自分の不甲斐なさに怒って、なんであなたと別れるなんて言うんだよ。このクリスマスに、それでなくとも俺がどんなにあなたに夢中なのか、あなたはまだわからないのか!?』

「そ、そうじゃなくて……」

 誕生日を教えなかったというものではない理由で怒られている気がする。

『病室に帰るから』

「今、飛出してきちゃって……」

『どこにいるの?』

「朱羽の家の近く」

『なんでそこに!?』

「だって、朱羽が怒って家に帰っちゃったと思ったから……」

『だったら俺の家に居て。速攻で帰るから』

「ん……」

『俺は別れる気なんて、まったくないからな!』

「は、はい……」

 なにか焦っている朱羽。

 それでも行き違いになるし、とぼとぼと朱羽のマンションに向かった。

「いらっしゃいませ、鹿沼さまですね」

 ……あのコンシェルジュだ。

 "ざまあ、クリスマスに別れ話だろう"

 そう言っている気がする。

 いや、あたしが悪かったんだし……。
 
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