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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
 

「どうなされました? ご気分でも悪いので?」

「い、いえ……。あの……あたし今日が誕生日なんですよ」

 思わず口にしてしまった。

「それはそれは。お誕生日、おめでとうございます」

「もし、彼がそれを知らなかったらどうなんでしょう?」

「香月様が知らなかったと?」

「はい。それで他のひとからそれを聞いて、飛出してしまって……今遠くから彼が帰ってくるんですけれどね……」

「はは……別れることになるのかとご心配されているので?」

「……はい」

「それはないでしょう」

 コンシェルジュは断言する。

「自分に腹をたてても、愛おしい恋人と別れるなんて愚かな真似はしません」

「………」

「それに、本当に香月さま、あなたと家に戻られる時嬉しそうですし、そこまで狭量な方ではないと思いますけれど」

「……っ」

「大丈夫。意味があって、遠くに行かれたんでしょう。今日は聖なるクリスマスです。あなたの恋人はちゃんと帰ってきますから、安心してお待ち下さい」

「……はい」

「私が、ちゃんとサンタさんに頼んでおきますから」

 ……このひと、いいひとだ。

 あたしは励まされて、朱羽の部屋に戻った。


 それから十五分後――。


「陽菜、いる!?」


 朱羽が帰ってくる。

 あたしは、座っていたリビングのソファから立ち上がった。

 朱羽が息も絶え絶えに走ってきて、あたしをきつく抱きしめた。


「別れるなんて言うなよ、俺は嫌だ。嫌だからな、絶対あなたを離さないないから」

「別に別れたいわけじゃ……」

「だから別れるなんて言うなよ!」

「あのね、朱羽……」

「別れ話はしないから」

「朱羽……」

「あなたが好きなんだよ」


「落ち着け!」


 あたしは朱羽の背中をぽんぽんと叩いた。
 
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