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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
「朱羽……」
朱羽は困ったように笑う。
「こういう形で縛られるのはいや?」
「とんでもない」
あたしは左指の薬指にそれをつけて、朱羽に抱きついた。
「最高の誕生日だよ! 嬉しい!!」
「来年、結婚しよう」
「……ありがとう。ありがとう」
唇が重なり合う。
涙の味がするキスを。
「あなたは来年、鹿沼陽菜から名取川陽菜、そして忍月陽菜になるけど、それでもいい?」
激動の人生。
だけどこれも幸せに繋がる道。
「あたしは――」
苦しんでもその分前に歩けば、こうして幸せが訪れる。
隠されて欠けたものはいつしか完全な円となる。
完璧な、エンゲージリングへ、そしてマリッジリングへと――。
「忍月陽菜になって?」
「ふふ、どうしようかな」
泣きながら笑うあたしは、指輪にキスをする。
何度も何度も、あたしの指輪にキスをして……そしてさらに嬉し泣きをする。
「陽菜。言ってることとやってることが違うぞ。……いじっぱり」
愛おしいひとが泣きそうな顔で笑う。
聖なる夜に繋がれた、愛するひととの縁。
「朱羽、メリークリスマス」
「ふふ、Happy Barthday、陽菜」
重なり合っても足りない愛。
繋いでも繋ぎきれない愛。
「愛してる」
いじっぱりの向こう側にある、溢れんばかりの愛をあなたに。
どうか信じて。
どんな不安定で苦しい時も、必ず光が差し込むから。
見逃さないで。
あなたにとっての太陽を。
あなたの太陽を守る月を。
月と太陽は、あなたの傍にある――。
「いじっぱりなシークレットムーン【完】」