この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon

「お前、随分ガード堅くなったよな?」
「へ? あれ外回りから帰ってきたの? お疲れ~」
「なにが"お疲れ~"だ! 俺は二時半には帰ってきた」
柱の時計は、四時半だ。
「おお~、二時間前には居たのか、しらなかった……うげっ!」
きゅっと強く腕に力を込められ、あたしはギブギブと結城の腕を手で叩いた。
「俺、LINE送ったんだけど。シカトすんじゃねぇよ」
「え? LINE?」
スカートのポケットからスマホを取り出せば、結城からのLINE通知が沢山来ていた。
「あ、悪い。全然気づかなかったわ。で、なにかあった?」
「お前な~」
今度はあたしにおぶさるようにして後ろから抱きついてきた。
朝まで馴染んでいたはずの、結城の匂いが鼻に充満する。
「ちょっと! 誰かに見られたら……」
「いいよ、見られたって。俺達仲のいい同期なんだろ?」
「結城!!」
「……陽菜って呼びたいんだけど」
「結城! あれは満月の夜だけよ」
「満月以外でも呼びたい。満月以外でも抱きたい」
「こんなとこで一体なにを……ひゃっ」
結城が耳を甘噛みしてきたのだ。
肘打ちしたら、結城が耳から離れた。
「いい声。この声とお前の感じてる顔知っているの俺だけだと思ってたのに……、あいつも……、ああ、くそっ」
結城が突然離れたから振り返ってみると、結城は顔を右の手のひらで覆うと、そのまま前髪を掻き上げた。
そして――。
「お前さ、俺を庇うためなら、俺はそんなもん必要ねぇから。はっきりあの課長と付き合ってないと、皆の前で言えよ。いいじゃねぇか、俺とホテルからの帰り、課長と会ったで。別に俺は、ホテルでお前を看病してたでもいいからさ」
ぎゅっと細められた、苛立つようなその瞳が、
「俺は、あんなぽっと出の年下のガキに、お前はやらねぇぞ。それくらいなら、俺は壊す」
あたしを貫いて。

