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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon

驚愕する一同の前で、さして課長は気にすることもなく、キーボードを打ったり、杏奈になにか指示をしたりして、残るふたりのプログラマーを呼んで指示をし、彼らはタブレットを取り出してふたりにつき、なにやら作業をした。
「念のため上から、Linuxサーバーと使っていないRAIDを貰ってきたので、その設定をお願いします。結城さん、RAIDお願い出来ますか?」
「ああ、それくらいは……。って、上ってどこだよ」
「古巣です」
「はああ!?」
「それと社長」
「おいおい、僕まで使うのか?」
「渉さんの上司、システム開発の長だったんでしょう? UPSを接続して、Linuxの設定、お願いします」
渉って、忍月コーポレーションの専務よね?
社長、あそこに居たの!?
「ったく、あいつ余計な入れ知恵を。わかった。今Linux、思い出すから」
頼りない言葉だけど、社長がトラブル時にこういう好戦的な顔をしていると、負ける気がまったくしないのは、社員一同皆同じ。
結城が佇んでいる連中に叫ぶ。
「営業、総務から江川と三橋の電話聞いて、電話かけまくれ。とんずらさせるなよ」
「了解!」
衣里が営業四人の尻を叩いた。電話が止まっているため、自分たちのスマホでかける気らしい。
あたしだってやるわよ。ただ見ているもんですか。
「デザイン課、システム開発課! 万が一サーバーが止まることに備えて、取引先へ事前にフォローして。急いで!!」
だったらあたし達も、スマホから。
パソコンがないために資料室から持ち出したファイルは、香月課長に見せたもので、思わず笑みがこぼれてしまった。
午後七時、電気点灯。
そして。
あたし達は、サーバーの危機を乗り切ったのだった。
香月課長がいなかったらサーバーは壊れていた。
杏奈も驚愕するほどのプログラマー技術を見せつけ、即席とは思えないほどのワーム駆除のプログラムを完成させたらしい。
「三上さんやプログラム開発部の方々のお力です」
やばいね、自分のおかげと言わないの格好いいね。
サーバーがワームの呪縛から解放され、別サーバーが元からあったような顔で起動したのは、午後11時50分。
「リミット前、お疲れさん」
社長の言葉で、あたし達は床に座り込んだ。

