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いじっぱりなシークレットムーン
第2章 Nostalgic Moon
***
シークレットムーンは、主に総務部(総務課、経理課)、営業部(営業課、販売課)、プログラム開発部、そしてあたしのいるWEB部(デザイン課、プログラム課)の四つで構成され、それぞれの部は多くて八人の社員が所属している。
結城のいる営業課がとってきたのが、サイト作りなどWEB構築系であればWEB部が担当、一からのシステム構築やパソコン環境の設定などは、杏奈がいる(杏奈に役職がないのは、自由人に対するせめてもの制裁か)プログラム開発部が担当し、社内で開発したものを商品化する場合は、プレゼンした上で上からのOKが出た上で、営業部販売課の協力を仰ぎ、場合によっては営業課の協力も必要となる。
四つの部に所属する社員がいて、さらにあたしが木島くんと話していた、パーティーションで仕切られているだけのオープン式ミーティングルーム、休憩室や喫煙室、給湯室やサーバー室、資料庫を設けても、シークレットムーンは無駄なスペースがありすぎる。
さらに階段を上れば、常務、専務、社長のいる役員室、秘書室、社員全員が座れる大会議室の他、来客の接待用の応接室が三つ、社内打ち合わせ用の小会議室が五つ。その他、倉庫や更衣室があるが、人があまり歩いていないために、一階以上に広く感じてしまう。
そんなシークレットムーン二階から、いつも社長室で寝ている社長が自ら一階にやってきたのを知ったのは、結城と一緒に仕事場に戻った時。
どの部の席には誰もおらず、代わってミーティングルームに人の山。
結城と首を傾げながら行ってみると、
「おおおお、鹿沼~」
野太い歓声があがり、人の波が左右に割れて道が出来た。
あたしはモーゼか!
道の奥にいたのは、笑うと目尻に皺が出来る四十代の男。
女が好きそうな甘い顔立ちで、緩やかにかけているらしいパーマをワックスかなにかで揉み込んだ無造作ヘアは、風呂上がりに髪を掻き上げたかのように、妙に色気を放ち、存在感がある。
そんな彼の今日の出で立ちは、紫のスーツに黒シャツ、赤いネクタイ。
おいおい、どこのチンピラさんだ。
思わず突っ込みたいのを我慢して、何事もなかったように普通に対応する。
「月代社長、どうなされました?」