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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon

いない。
帰ったのか?
帰ったならいいけれど、倒れていたら?
あたしは課長の電話番号を知らないことに、今更ながら気づいた。
電話をかけることもできない。
今朝の一件でメルアドはわかるから、メールしてみようか。
多分課長なら、スマホで見れるだろう。
だけど具合悪いひとが、メールを見て応えられる?
――どうせこのカバは他の女達みたいに俺には媚びねぇし、連絡があるとすればお前のことだろ?
「そうだ、専務なら知ってるわ!!」
急いでバッグを漁り、名刺の裏に書かれた電話番号に電話をかけた。
遅い時間だけれど、緊急事態だと許して貰おう。
なかなか出てくれない。
寝ているのかしら?
後で寝ていいから、お願い出て。早く出て。
『――はい』
「もしもし、あたしシークレットムーンの鹿沼と申します。いつもお世話になっております。夜分大変申し訳ありませんが、宮坂専務のお電話でしょうか」
完全営業モード。
『よう、カバ。まさかこんな夜中に電話来るとはな。俺、イク前だったんだけど』
「……す、すみません。電話終わったら、ゆっくりイッて下さい」
『ぶっ』
笑い出す専務とはまた違う、不機嫌そうな女の声が聞こえる。
うわ、本気でセックス中だったのか!?
『あんた誰よ!? また渉の遊び相手!?』
綺麗な声だけど、怖い。
後ろで専務の声が聞こえる。
『違う違う。こいつは朱羽のカバだ』
笑う専務の声は無視して続けた。
「まったく専務には関心はありませんので、どうかご心配なく。初めまして。シークレットムーンの鹿沼と申します。本当にこんな夜遅く申し訳ないんですが、緊急事態が発生したので、どうしても専務にお伺いしなければならないことが……」
『どんな?』
はあ、営業モード疲れた。
あたしは、専務のプライベートに干渉したいわけではないのだ。
「専務の親戚の香月朱羽課長を探しているんですが、電話番号を教えて貰いたくて。それだけです。電話番号さえ聞いたら……」

