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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon

『え、朱羽くん行方不明なの?』
「はい。結構熱出していたので、倒れてないか確認したいんです。だから……」
『ちょっと待って。番号、覚えれる?』
「はい、お願いします」
あたしはスマホから流れてきた番号を、ボールペンで左手の甲に書いた。
「ありがとうございます。お邪魔してしまってすみません。では」
『ねぇ、あなたもしかしてヒナ?』
「え、はい鹿沼陽菜ですけれど」
『そうか、そうか。だったら朱羽くんのことお願いね。あ、私はね、沙紀。吾川沙紀って言うの。今度会いましょう』
「はい、沙紀さん。その時はまた」
……なんであたしが、専務と寝ているひとと会うんだ?
なに、専務があたしと浮気をしているの、まだお疑いとか?
その割には明るく綺麗な声で電話が切れた。
「あ、専務にお礼言ってないけど、まあいいや」
香月課長の電話番号を知っているのだから、よほど課長とも専務とも親しい間柄なんだろう。専務の婚約者とかかしら。
「どうでもいいや。興味ないし。それより電話電話」
呼び出し音が聞こえるが、応答がない。
電話をかけ続けながら、あたしは課長を探して歩く。
やがて――。
『……はい』
ほとんどため息のような声が聞こえた。
「香月課長ですか!?」
『……はい』
「……っ」
いかんいかん、このため息のような声は喘ぎではない。
だるそうな声だ。
「家ですか!?」
「……い…いえ」
やはり課長は家に帰ってない。
まるでYES・NOゲームをしているようだ。
だったら、それ以外の答え方をさせてやろうじゃないか。
「そこはどこですか!?」
「……さあ」
そう来たか。

