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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
「課長は魅力的すぎてあたしを乱します。だから触られたくない。ドキドキがとまらなくなるから。あたしは課長の玩具にはなりたくない」
「……玩具?」
訝しげな声が聞こえる。
「遊び相手という意味でも構いません。遊ぶなら、違う女に……」
すると課長があたしを抱きしめてきた。
「なんか俺、告白されている気がする。……熱あがりそう」
「はああああ!?」
「それは結局、遊びじゃなく本気ならいいってことだろう?」
いつの間にか丁寧語がとれた課長に違和感を覚えず、あたしは自分の言葉を反芻した。
確かに、そうとれるかもしれない。
「あたしは課長を好きではないです」
そう釘を刺したというのに――。
「はは。今の時点でそうなら、俺に堕ちたらあなたはどうなるんだろう」
「はいぃぃ!?」
「いいよ、今は好きじゃなくて。俺も確かにあなたを軽んじた。だけどあなたが簡単に寝ない女だというのなら……」
不穏な言葉が途切れて、さらに不穏に思う。
「あ、あの……」
「心を貰うから。それであなたから求めさせる」
「心? あの、さっき言いましたが、あたし課長を好きには……」
「何度も言うな、傷つく!」
「す、すみません……」
何であたし怒られているんだろう。
「ヒナ……」
熱い息が首にかかる。
「……逃げないで、欲しい……。九年前みたいに……」
熱い身体であたしを覆いながら、わずかに震えながら課長は呟く。
……あたしは家に帰る願望を捨てた。
あれほど帰ろうと思っていたのに、傷ついた小鳥のように震えるこのひとの隣で眠りたい気がしたのだ。
同情とも母性本能とも、或いは贖罪ともまた違う、なにかもやもやとした気持ちから彼から離れたくないと思った。
「今度は九年前のように逃げません。一緒に寝ます。課長が目が覚めたら、傍にいますから。だから本当に熱があるんですから……」
「ああ、寝よう。あなたが傍に居てくれるのなら、俺は安心して寝るから。……おやすみ」
睦言のように甘く囁き、ちゅっと頭に唇が落とされた。