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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
「一緒って……」
「ひとりで待っていてもつまらないので」
課長の様があまりに堂々としすぎて、あたしは唖然と口を開けていた。
あ、浴室なのになんで眼鏡かけてきたんだろう、とか、腰に巻いてるあの一枚が邪魔だなとか、馬鹿みたいなことを頭の片隅で考えながら。
そんなどうでもいいことより、まずはあたしの身体に咲いた赤い華を文句言うべきじゃないか?
とりあえず思考回路が、彼にもの申す優先すべきものを弾きだした。
「課長、寝ている間にあたしの身体にキスマ「鹿沼主任。身体洗わないで、ここでなにを?」」
うぉぉぉぉ、会社モードなんですか!?
ここで!? 裸で!?
久しぶりの(マッパの)冷視線だというのに、不意打ち食らったようなこの冷めた目線に、強烈なドキドキが止まらない。え、あたしMなの!?
彼が示す指を辿れば、洗浄途中のショーツに行き着く。
「――っ!!!!」
教師や親に隠していたエロ本とか大人のオモチャとかを見つけられた、なんだかそんな気分。
やばっ!
慌てて後ろに隠し、借りたタオルをあたしが見られたくないところに巻き付け、何事もなかったかのように必死で振る舞う。
突っ込むな、突っ込んで聞いてくるな!! 突っ込んで聞いてきたら、噛みついてやるから!!
密やかに怨念のような呪いを飛ばすあたしは、キスマークを問い質そうなどという気持ちは、とっくに空の彼方。
「それは?」
「キャ、ヤダミナイデクダサイヨ~、エッチ~」
「……なぜに片言」
無視してあさっての方を向いて、次の手を色々考えている間に、課長はそのまま白くて大きな浴槽にざぶんと浸かった。
え、本気に入ったの!? 冗談じゃなくて!?
目が合うと、彼は艶然とした笑みであたしを片手で手招いた。
「来る?」
誘惑された瞬間、「行くぅ」とふらふらと赴きそうになるあたし自身に喝を入れて、あたしから出た言葉は――。
「お風呂入って、眼鏡曇らないんですか?」