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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
入ってすぐショーツを洗っていたからよく見ていなかったけれど、浴室は大理石調の白いタイルで覆われ、あたしの家の寝室より大きく広い。
浴槽の方がドアに近いところにあり、洗い場にいるあたしの方が、奥に追い詰められているような構図だ。
簡単に逃げられる感じでもなければ、石けんで泡立てた中途半端なショーツと、中途半端に濡れたあたしの身体では服が着れない。というか、この状態の下着どうするの?
ここは課長の家だから住人である課長がなにをしても、ただの客人のあたしには文句言えないことはわかってはいるけれど、考えてみればこのひとデリカシーっちゅーもんないのかしら!?
女が浴室にいる時に入るのが、アメリカンスタイルとか言っちゃう!?
郷に入らば郷に従えっていう言葉、知らないのかしら!
今あなたの居住は日本のここでしょうが!!
慎ましやかに! 奥ゆかしく!
「ぶはっ」
課長はあたしから顔を背けた。
「なにか!?」
「いえ……くくく、駄目だこのわかりやすい百面相に笑いが」
「なにか言いました?」
「いえ。……くくくく」
浴室に、課長の笑い声が反響する。
なんで笑われたのかさっぱりわからない。
「課長、本気になにしに来たんですか!? 用があるならすませて……」
警戒しながらそう言うと、
「ああ、あなたが上がるまで、一緒に湯に浸かってテレビを見ようかと」
さらっと。とにかくさらさらっと、あなたなにを仰っているのでしょう。
課長がまっすぐ壁に向けてさした指の先には、庶民には無縁の、壁にかかっているらしいバステレビなどいうものがある。さらによく見れば、課長が手を伸ばせば届く距離の壁に色々なボタンがついたパネルがある。
突然パチッと音がして、薄暗くなった。
代わりに課長の入っている浴槽の中が灯がついた。色が変わるLEDだ。
「ちょ、なんで暗く……」
「テレビが光るので」
「リビングで見ればいいじゃないですか!!」
「ここの方が落ち着くんです」