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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 
 
 課長がいるのに、下着も身体も洗えない。なによりタオルはあたしの身体に巻いているもの一枚。これを外したらマッパだ。これはさすがにやばい。

 テレビからの笑い声が響く。

 駄目だ。このひと、てこでも動かないつもりだ。だけどきっと湯にのぼせたら部屋に戻るはずだ……そう思えど出て行く気配はなく、テレビから漏れる笑い声が響くのみ。


「……熱くないんですか?」

「ああ、向かい側から涼しい風が来るんです」


 確かに課長の髪が揺れて、課長は気持ちよさそうだ。

 この金持ちめ!!
 

「私にお構いなく、どうぞ思う存分濡れた下着をお洗い下さい」


 ギクッとなりすぎて、ショーツがタイルの上に落ちた。


「気づかないとでも思ってたんですか? 可愛いひとだ」

 朝なのに窓のない暗がりの中、神秘的な氷のような青色に染まった課長は、妖しく艶笑する。人外の美貌を見せつけながら。

「トイレがわかりませんでした? それとも、寝ている時に漏らすのが癖「あんたのせいでしょうが!!」」

 思わず言ってしまった。……真っ裸にタオル1枚の際どい姿のままで。暗いから言えるのだ。

「へぇ? 私のせいだと? 私、あなたにどんなことをしたんですか?」

「……っ!」

「熱を出していて、なにも記憶がないんです。ねぇ私がどんなことをして、あなたが下着が洗わないといけないほどに濡れてしまう羽目になったんですか? 具体的に教えて下さい」

 この――ドSめ!

「それと夢の中で、あなたから、"課長は魅力的すぎてあたしを乱します。だから触られたくない。ドキドキがとまらなくなるから。あたしは課長の玩具にはなりたくない"とか言われた気もするんですが、本当のところを教えて下さい」

「確信犯でしょう、絶対そうでしょう!?」

 あたしは涙目だ。

「一言一句間違えずになんでそんなもの記憶してるのよ!! 脳細胞の無駄遣いよ!!」


 思わず人差し指を突き立てると、課長の手が動いた直後に、天井からシャワーがふってきた。

「うわっ、冷たっ、なにこれ! あたしシャワー出してないのに!!」

「ああ、オーバーヘッドシャワーを間違って出してしまいました。あれ、温度どこで変えるんだったかな」

 嘘つき――っ!!

 
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