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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 
 冷水にパニックになっているあたしは、ドアから出ていくことを忘れて、おいでおいでと両手を出している、ライトアップされてホカホカ湯気立つ課長の下に、本能的に反射的に駆け込んでしまった。


「よいしょ」


 持ち上げられたあたしは、ドボンと浴槽の中。


「なっ!!」


 そこで我に返る。


「あなたが飛び込んできたんでしょう? テレビ見えないんですけど」

「え? あ、ごめなさい……」


 浴槽から出ようとしたあたしは、またもや課長の手によりくるりと向きを変え、課長の足の間にドボンだ。

 逃げられないように、後ろから抱きしめられて。
 
 タオルをつけているとはいえ、昨夜のように服を着ていないわけで、肌と肌が直接重なる感覚に甘く痺れるようだ。

 ドキドキとゾクゾクを通り越して、密着している熱を感じて震えが来る。はしたない声がでそうだ。

 まるで男に飢えていたような、まるで生娘のような……なんでここまで課長を意識してしまうんだろう。なんで課長の香りに呼吸が乱れるの?

 過去に関係したから?

 格好いい上司だから?

 逃げようとしたら、あたしの脇の下から伸びた課長の腕が、タオルの上に巻き付き、身動き出来ない。さらにはその手がタオルを取ろうとする素振りを見せ、あたしは慌てた。


「や、ちょっと課長!」

「身体洗いたい?」

「はい、洗いたいから離して……」


 トプン。

 課長はなにかを湯の中に入れたようで、片手で湯をかき混ぜるとそこからもくもくと泡が出てくる。

 あっという間に泡風呂だ。


「向こう式に浴槽の中で、洗ってあげる。……泡があなたの身体を隠してくれます。だから……要りませんね?」

 あたしの返答を待たずに、するりとタオルを取られた。
 

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