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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
だから――。
「俺、二週間後に誕「無理です」」
「……即断するなよ。もっと考えろよ」
不可抗力的に課長に吸い寄せられるから、明確な線を引きたい。
怖いの、こんなこと今までないから。
自分を見失いそうになるから。
「……今は無理ですけれど、この先もしあたしが弱さを克服して、ハイスペックな課長が本気でこんなあたしでいいと思って下さる時が来るのなら、その時はシンデレラ気分で、ちょっとだけ夢見たいような気がします」
条件付けしてしまうほどには、あたしは課長に惹かれて、男として意識している。
「課長は、夢物語の王子様ですから」
課長だから抗えずにこんなことを許してしまっている気がする。
彼には、満月じゃなくても欲情してしまう。
「最初から線を引かずに現実の俺を見ろよ。ハイスペックでも王子様でもないぞ、普通の男だろう?」
なんだか自分をダサ男だと主張する必死な課長が可笑しくて、可愛く思えてしまう。大人であり、子供でもある彼が可愛すぎる。
「課長こそが卑下しすぎですって。その気になればハーレム作れると思いますよ、その女避けの眼鏡効果、まったくないかと思います。本当に美女がよりどりみどりな立場にいるんですよ、課長」
すると課長は、苛立たしげに眉を顰めた。
「……あなたの弱さってなに?」
――この先もしあたしが弱さを克服して、ハイスペックな課長が本気でこんなあたしでいいと思って下さる時が来るのなら、
そこまで話題を遡るか。
「その言葉の通りあたしは弱いから、終焉がある恋愛をしたくないんです。あんなに面倒で傷つくことはもう懲り懲り。いつか終わることに怯えるなら、仕事をしていた方がよっぽど毎日充実感がある」
あたしをじっと見つめる課長の瞳が、LEDに緑色になった。
「……。……でも、セックスはするんだ?」
「どうとでも思って下さい。あたしも女だし、事情があるんです」
「教えてよ、その事情」
課長の目が、懇願するように細められる。
「それも無理です。理解を得られるものではないですから」
「……もしかしてそれ、結城さんは知ってるの? 結城さんはあなたの理解者だから大切だ、と?」
「……はい」
なんで結城の名前が出るのか不思議だったけれど、本当のことだし、あたしは素直に頷いた。