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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
セットをしていない前髪は完全にさらさらと、眼鏡をかけている端麗な顔にかかって、幼いようでありながら、どこか野性的なものも感じる。
彼は、氷の彫刻のような無機的な存在ではなく、やはりあたしと同じ生きた人間であり、あたしとは違う男なのだ。
スーツ同士の会社だけの関係であったはずなのに、課長のお宅で課長の服を着て、課長の私服を見れるなんて、面映ゆくてむずむずしてしまう。
朝を迎えただけではない。最後までしていないだけで、仕事の付き合いだけの普通の上司と部下との関係ではないことをしているのだ。
今更ながら、ドキドキする。
あたしを取り囲む課長の匂いに、身体が熱くなる。
「別に俺、あっちで一人暮らしして料理からなにから全部自分でしていたし、気にすることないから」
多分、そんなことになっているのはあたしだけで、課長は至って平然としている。悔しいくらい普通だ。
「いや、だけど……あたしも結構長年ひとり暮らしですし」
「だったら夕飯作ってよ、あなたの手料理楽しみにしてるから」
普通に笑顔で言われたけれど、
「夕飯って……あたしこれで帰りますけど」
「え?」
「いや、そんなに驚かなくても。ほら、せっかくのとろとろ黄身が落ちちゃいますから!」
「え、あ……。泊まっていけよ、明日も休みなんだし」
ううっ。
そんな目をされると、凄く自分が非道なことをしているような気になってくるんですけれど。
だけどお泊まりするのは恋人や愛人でしょう?
あたしは違うよ、……今は。けじめは大切だよ。
「あの……。それはちょっと……あたしはただの部下ですし。昨日お泊まりしてしまったのは、課長がお熱出したからで。お熱がないなら、あたしの役目は終「まだ微熱がある!」」
「そんなお口尖らせても、駄目です。もう大丈夫でしょう? お風呂でもあんなことやこんなことする元気あるんですし。今も……うん、おでこ、このくらいなら大丈夫です。あたしの方が熱いくらい」
むしろあたしがいる方が、熱があがるのでは?
あたしに対して色々動いてるし。そう、色々……。