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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 
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 ……それを信じたあたしは十分後、家とは正反対にある都心の一角、銀座に停められた車の中にいる。

 そりゃあね、天下の東京なら物珍しい外車もあるでしょうけれど、だからといってなんでこんな人通りの激しいところに車置くかな!

 客寄せパンダがあたしじゃなくて車だということが余計に腹立たしい。

 ちらちらと通行人の視線を感じるのは、そんなにこの車が珍しいものなのだろうか。エンブレムが同じなら車のデザインも同じのように思えるあたしには、課長の持つ車の価値がまったくわからない。

 ひとつわかることがあるとすれば、こんな車にあたしが男物のサンダルを裸足で履いているとは誰も気づかないだろうということ。

 こんな特等席でこんな格好してるとは――。


 課長、今までこの助手席に誰か乗せたのかな……。

 チサは乗ったのかしら。


 他の女のことを考えると、ちくりと針で突かれたように痛む胸の奥。微かな痛みを感じながら、あたしは、銀座と書かれた標識を見てため息をついた。


――ちょっと寄りたいところがあるんだ。


 課長が降りて30分――。

 ようやく課長が帰ってくる。なにかを買ったようだけれど、待たせた割にはなにを買ったのかよくわからない。

 なにか箱のようなものに見えるが……。


 あたしの座るシートに手を置いて、バックを始める課長。

 バックミラーを見ながらハンドルを切る課長の姿を、密やかに盗み見たあたしは、反対側を向きながら顔の火照りを冷やす。

 あの首から鎖骨にかけて、ムラムラしたなど口が裂けても言えない。
 
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