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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
「か、課長。頭が回りません。気に入るもなにも……なんでこれ」
「だからあげる。俺のためにあなたは靴を脱いだんだろう? だからお詫び」
「いや、でも踵が折れたのはあたしのせいで……って、このブランド、凄まじい値段のところじゃないですか!」
「そう? 知り合いが店長だから、そこにしたんだけど。女性がここの靴は憧れると、店長からよく聞いていたから。そこならいいかなって」
「いいかなって……。お幾らしたんですか!? あたしお金払います!」
「だからお詫びだって。いい格好させろよ」
ハンドルの上に、組むようにして置かれた両手。
その上に頬を置いた課長は、とても優しげな眼差しを向けてきた。
「いや、だけど……」
「気に入らないのなら、あなたが直接選んでよ。店に戻る」
「気に入らないわけないじゃないですか! これあたしの好みにどんぴしゃりで、こんないい靴あたし会社になんてもったいなくて履いていけませんよ!?」
「俺の家に来て」
「へ?」
「俺の家に来たい時、会社にこの靴履いて俺に見せて。コンシェルジュに、俺が家に居なくても鍵を開けてあなたを中にいれるように言っておく」
課長は微笑みながら言う。
「あなたが居てくれたから、俺は元気になった。だから俺はあなたに感謝の印を贈りたい。だから受け取って。それを履いて、毎日でもいいから俺の家に来て」
「いや、でも……」
「……恥かかせるなよ」
苦笑する課長を見て、大きなため息をついたあたしは、頷いた。
「……わかりました。だったらこれ、タンスの奥にしまっておきます」
にやりとして言うと、課長が拗ねた。
ドアを開けて、課長に見せるようにハイヒールを履く。
まるでオーダーメードのようにぴったりだった。