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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
「……昔寝た相手に、情でも湧いた? そこまでよかったのか、あいつとのセックス。肩書きじゃないなら、惹かれたのそこ?」
結城の目が真剣で、だからあたしは誤魔化すことが出来ず、言った。
「よく……わからないの。まだ」
「まだ、か……。まだ、ね……」
結城は皮肉気な笑いを作る。
風もないのにコンビニ袋がカサカサと小さな音をたてているのは、結城の手が震えているのだろうか。
「俺の前で、すげぇ恋しそうな顔して車見送ってたのに、"まだ"か。長年一緒に居て、お前を毎月抱いてる俺は、一度だってそんな顔されたことねぇのにさ!」
「ちょ、結城、声を小さく……」
コンビニ利用客がにやにやとした目であたし達を見ている。恥ずかしくなったあたしがそういうと、結城はいらっとしたように眉間に皺を寄せて、あたしを抱きしめ、キスをしようとしてきた。
「結城!」
怒って顔を背けると、結城は苦しそうな顔をして、あたしを胸にぎゅっと力強く抱きしめた。
「……俺は拒むのに」
震えた声が、身体全体から伝わってくる。
「だって人前……」
「じゃあ人前じゃなかったら、いつでもこうしていいの? 好きな時にお前にキスしていいの? お前を俺の家に泊まらせて、呼び捨てにしてもいいの? ……満月の時みたいに、激しく求め合える?」
「……っ」
言葉に詰まると、結城の乾いた笑いが感じ取れた。
「八年経っても、俺は満月だけの男? 特別な友達?」
結城の声と熱が苦しい。
「……陽菜。俺どうすればいい? どうすればあんな目をして俺を見てくれる? どうすれば離れたくないと一緒に居たいと、男として意識する? ……朝になったらさっさと帰らないでいて貰えるためには」
「結城……」
「あの約束反故にして、恋人になりたい。そう動きたい」