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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
あたしは泣きそうになった。
満月が過ぎた朝、結城が付き合おうと言うことは最近多くはなったけれど、それは一過性のように流せるものだった。なによりあたしは約束で線を引きたかった。満月ではない時くらい、結城を縛りたくなかったから。
そしてそれは渋々とでも、わかって貰えていると思っていた。
初めてなのだ、結城が満月以外でこの手のことを訴えたのは。
悲痛なその声に、ぎゅっとあたしの胸が絞られるように痛んだ。
いつも朗らかな結城のこんな声に、あたしも震える。
「なんで、恋愛をするのにあいつはよくて、俺は駄目だ? あいつがいいというのなら、俺が納得できる理由を見せろよ。……見せても、やんねーけどよ、お前を」
そして結城は、なにか思い当たったようにぎゅうとあたしを抱きしめる手に力をいれると、あたしの耳に囁いた。
「……まさか、思い出したから…とかじゃねーよな?」
低く震える声で。
「思い出すってなにを?」
すると結城は身体を離して笑った。
「なんでもねぇ。俺は今日帰るけど……明日出かけるぞ」
「は? なによ突然。家の掃除が……」
「そんなもん今日で終わらせろ! 遊びに行くぞ、俺のストレス発散にお前付き合え。めちゃイライラしてるのお前のせいだから!」
「そ、そんな……」
「これ、やるから飲め。昨日からご苦労さん。今日はゆっくり寝ろよ、明日迎えに行く。夜LINE入れるから必ず返せ。最近シカトばかりだからな」
コンビニ袋を開けば、ビタミン系のジュースが沢山入っていた。
少しだけ元気よくなった結城は笑った。
「デートだからな! 気合い入れろよ!!」
耳を赤く染めながら。
「気合いって……」
思わず笑ってしまったあたし。
お誘いを断らなかったのは、あたしは明日、結城と話そうと思ったのだ。
課長に抱かれるためではなく、あたしに縛られすぎている結城を解放しないといけない時期に来たと思ったから――。