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いじっぱりなシークレットムーン
第2章 Nostalgic Moon
眼鏡のレンズがキランと光った。
「私のことが気になるんですか?」
「っ!!?」
向けられた表情があまりに妖艶すぎて、思わずあたしは唾を飲み込んだ。
ああ、この顔は――。
――チサ、気持ちいい?
彼の一直線の視線と、纏う妖艶さが、取り繕ったあたしを一枚一枚剥ぎ取っていき、代わりに熱で覆っていく。
満月が近いせいなのだろうか。
満月以外に、男に欲情なんてしたことなかった。しかもそれが、満月に抱き合った、1回で終わらすはずの男なんて。
息が乱れる。
身体が熱くなる。
「鹿沼さん……?」
近づいたその瞳で覗き込まれ、
否応なしに、吸い込まれる――。
心の制御がきかないなんて、まるで満月の発作のよう。
そうよ、きっとこれは満月のせい。
だけどあたしはわかっている。
これは月のせいなんかじゃないってこと。
無言のまま、あたしを見つめたままの彼の手があたしの頬に添えられる。
ひんやりと気持ちいいその手に癒やされたような気分になり、思わず目が細まり口元が綻んだ。
満月の形に近づきつつある歪つな月が、彼の後ろに広がる大きな窓から顔を出す。彼が、月明かりに染まっていく。
琥珀色になった瞳が、揺れた。
彼の目からは氷が取り払われ――。
「………っ」
熱が残る。あの時と同じような。
「………」
「………」
高まる鼓動。
見つめ合ったまま、魅入られたように動けない。
彼が動いた気配がする。
彼の手が、あたしの後頭部を撫でた。
そして――。