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いじっぱりなシークレットムーン
第2章 Nostalgic Moon
RRRRRR
唇が重なる直前、隣の椅子に乗せていたあたしのバックからスマホが鳴った。大きな音で、まるで警鐘のように。
それで我に返ったあたしは、彼から身体を離すようにして、スマホを取り出した。
結城からの電話だ。
取ろうか取るまいか。
結城は、あたしが残業していることを知っている。その上での緊急事態かもしれない。……まるでそう思い込んで、結城に助けを求めているように。
身体のじんじんが止まらない。
理性が戻っているのに、身体が疼く――。
「どうぞ、電話をお取り下さい」
適度に保たれた距離感で、香月課長は怒ったような口調で言う。
このままだと、あたしは彼を求めてしまう。
心ではなく身体が――。
『もしもし、鹿沼。もう九時だけど大丈夫か!?』
結城はわかっている。
きっと、だから言ったんだ。
――社長、俺もいいですか? 営業からもちょっと言っておきたいことがあって……。
――満月近いけど、身体大丈夫か?
ああ、あたしって駄目駄目だな。
心身が不安定になる時期を、一番に理解していないといけなかったのに。
「ごめんなさい、課長。急用ができたので、あたしはこれで」
彼がどんな顔であたしを見ていたか、あたしは知らない。