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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 

 それからの結城のLINEは来ない。

 続きが来なくてイライラする。

 まるで陽菜を想うあいつみたいじゃないかと、気持ち悪くなった。


 だから――私が。この私が!

 仕事でもないのに、自分から結城にLINEしてしまうなんて!


 "誤解があったなら、ちゃんと話せた?"


 なんでこんなお天気の休みの朝から結城とLINEしないといけないのか。このLINEは営業の緊急用で作ったものだというのに、なんで私が結城の恋路の"協力者"になってるのよ。

 既読にはなっていたけれど、返事はこなかった。


 代わりに夕方陽菜からLINEが来た。

 昨日なんでタクシーに乗らなかったのか訊いたら、最初はぼかしていたけれど、私がそんな答えで満足するはずがない。

 陽菜に関しては野生の勘が働く結城が苛ついたこともあるし、私も私で頭の片隅で思っていたことがある。

 "課長のとこにお泊まり?"


 ややしばらくして返事が来た。


 "うん"


 結城といい陽菜といい、それだけかい!


 "そんな関係? 会社で約束してたとか?"

 "違うの。課長が熱出してたのがわかったから。あの後駆けつけたら課長、樹の下でぶっ倒れてて、解熱剤飲んでも39度以上あって。それで課長の家で看病してた"

 "熱? それだけの熱あってプログラム組んでたの? めっちゃ涼しい顔でカタカタしてたじゃない。なんで陽菜、気づけたの!?"

 私や結城、社長すらそんな気配を感じ取っていなかった。

 観察眼が鋭いはずだったのに!


 なんで陽菜が気づけたの!?


 もしや、陽菜の変調にすぐ気づける結城のように――。


 "愛?"


 陽菜からのLINEを待つのがもどかしくて、電話かけた。


「陽菜、あの新任課長が好きなの!?」

『……わからない』


 陽菜の返事は決定的じゃないか。

 いつも陽菜ははっきり言う子だから。

 陽菜が課長のことをなんとも思っていなかったら、すぐ「そんなわけないじゃない」と笑い転げるはずだ。

 以前、結城のことを訊いた時も、陽菜は否定した。

 結城は恋愛とは違う形で、必要としている友達だと。

 八年の付き合いがある結城ですら、私にもそう言っていた陽菜なのに、課長のことは、好きな可能性を否定しない。
 
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