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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
「なんでタコさんウインナー好きなの? 大学の頃からだよね?」
「ん……話したことなかったっけ? 俺の母親病弱でいつも入院してたから家にいなくてさ。たまに退院すると、タコさんウィンナー作ってくれたんだ。だから俺、それがもの凄いご馳走に思えてさ。ソーセージって直線なのに、くるっと丸まった足がたくさんあるんだぜ!? なにこれすげぇぇぇって」
「お持ちしたのも沢山あんよが、くるんくるんと丸まってますよ、マザコンの結城くん」
マザコンとは本気では思ってはいない。
ただ可愛い結城を茶化してみたくなっただけだ。
「マザコン言うなって。俺、マザコンじゃねぇからな。お前をお袋の代わりにしてねぇからな!」
「うふふふふ、慌てちゃって怪しい~! 皆さ~ん、結城営業課長はマザコンだからタコさんウィンナーが大好きなんですって~」
窓に向けて口の両側に両手を添えてそう言うと、よほど慌ててるのか、シフトレバーから手を離した結城が、あたしの腕を掴んだ。
「おいこら! 信じろよ! マザコンじゃねぇからな!?」
「ええええ?」
「信じろって!」
ひとしきりマザコンネタで結城をいじり、あたしはふと……結城が一本もタバコを吸っていないことに気づいた。
「結城、遠慮しないでタバコ吸っていいよ。着くまで距離あるんだし」
「ああ、大丈夫。別に吸わなくてもいいし、お前煙苦手だろう?」
「別にいいって。煙たかったら窓開ければいいし。あんた会社ではヘビースモーカーかってなくらい、喫煙室にいるじゃない。我慢しなくていいから」
「会社は疲れるんだよ。営業なめんなよ、鹿沼主任」
ちょっと威張り腐って結城が言う。
「ん。だけど無理しないでね」
「了解」
高速に乗った時、結城が不意に言った。
「……お前、なにげに緊張してね?」
「ん?」
「お前、昨日の今日で俺の誘い受けてふたりで遊ぶの、なにか考えあるからなんだろう? ……俺、すげぇ心臓バクバクなんだけど」