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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
結城は笑いながら、心臓のところに手を置いた。
「だけど、俺にも譲れねぇもんある。俺、みっともなくても思い切り足掻くから。……それを覚悟するくらい、すげぇ危機感持ってる」
結城がなにを言っているのか、あたしはわかった。
今日、あたしが結城をフるのだと思っている。話し合いではなく、あたしが結城を切るのだと。もういらないと。
凄く心が痛んだ。結城は、あたしが結城をばっさりと切り捨てられると思っているのだと思えば。
「先に言っておくけど、俺、別に嫌々満月の相手してたわけじゃねぇから。お前、ごちゃごちゃ言うけど、俺の意見は昔から変わってねぇぞ。嫌だったら俺、八年も付き合ってないから。俺、嫌なことをずっと続けるほど善人じゃねぇんだわ。……下心ありあり。お前に約束持ち出されて拒まれてばかりだけど」
結城の前を見据える目は真剣だった。
「満月なければ、俺……お前と繋がれねーじゃん。だから駄目。満月の役目は、香月には渡さねぇから。その頼みをしたいなら、香月に話して俺のような理解を貰ってから来い。もしまだそんな勇気がなくて、あいつにいい格好しようとしてるのなら、駄目だ。話し合うまでもない。俺を軽んじるなよ、俺は生きた男なんだから。……傷つきもする」
痛いところを突かれる。
ぐぅの音もでないとはこのことだ。
"傷つきもする"
心に突き刺さる。
「はい、これでおしまい。緊張する話は後にしろよ。せっかくレジャーパーク行く意味ねぇじゃん。ストレス発散して遊ぼうぜ?」
「結城……」
「……もっと、満月以外のプライベートの俺を知ってから答えを出せ。暇もてあましてた大学の時とは俺、違うぜ? 俺がなにを考えているのか、お前は常時もっと知ろうとしろよ。お前は俺のすべてをわかってはいない」
何度もお見通しの結城のきっぱりとした言葉に、あたしはうんと頷くことしか出来なかった。
確かにあたしは、結城という存在を既にわかった気でいて、現在進行形で詳しく知ろうとしていないということを、結城に言われて気づいた――。