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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
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結城との待ち合わせは更衣室の前。
更衣室は入り口近くにマッサージチェアが五台置いてあり、何層ものお腹を揺らすおばさま軍団が占領して雑談していて、それがあまりに日常の一幕のように感じたからちょっと怖い。
水着は服の下に着ていたために着替えは早かった。
衣里が選んでくれた白いビキニ。胸にはひらひらがついていて可愛いのだ。なぜに夏を過ぎて結城に披露することになったかとは思うけれど、あたしは水着はこれしか持っていないのだ。
だけどまあ、大きなパーカーを上に羽織って、更衣室を出る。
「………」
扉を閉めてまた更衣室に戻った。
そしてゆっくりと扉を開けて見てみる。
まるでアイドルを見つけたように女達が群がっている。
その中心にいるのは、首一つ高い……壁に背を凭れさせてあたしを待っているのだろう、海パンにパーカー姿の結城だ。
やっば。
あたし結城に慣れていすぎて全然考えていなかったけれど、結城もまたイケメンだ。精悍に整った顔だけではなく、ジムで鍛えた長身の身体。
さらっとパーカーを羽織っているだけの奴は、肉体美を無自覚で披露して女達をフェロモンで寄せ付けている。
さすが営業、笑顔で相手をしているけれど、あの顔は苛立っている。相当女達が押せ押せなんだろうか。
いや、だけどね。
結城が待っているのが、取り巻いているナイスバディーなお姉様達のような美女だったらまだしも、あたしはこんなのだ。
これはやばいでしょう。公開死刑食らっちゃうよ。
あたしはパーカーのチャックを首のところまで上げて、まずはここは他人の振りをしてひとまず通り過ぎようと身体を縮めた……が、それを目敏い結城が見逃すはずがない。
「陽菜」
しかも名前呼び捨てだよ。
ヒナトハダレデスカ。アタシシリマセヌ。
「反対見て通り抜けようとすんな! こら陽菜! そこの、壁になっている……お前だっ!」
しかもスポーツなんでもござれの奴は、すっと集団から飛び出てあたしの背中のフードをむんずと掴んであたしを逃がさない。